歯の審美性、機能性を上げる目的で行われるのがセラミック治療です。
ただしセラミック治療は保険が適用されない高額な治療であるため、できる限りつくり直しはしたくないと考える方が多いです。
では、一度装着したセラミックを使い続けることはできるのでしょうか?
今回はこちらの点について解説します。
同じセラミックを使い続けることは可能?
結論からいうと、同じセラミックを一生涯使い続けることはできません。
経年劣化が起こりにくいセラミックでも破損するリスクはあり、破損したものはそのまま使えなくなります。
セラミックは変色を起こさず汚れがつきにくい点、酸化や腐食に強く化学的に安定している点などがメリットです。
そのため、欠けたり割れたりしてしまうことがない限りは、半永久的に安定した状態で使用できます。
しかし、半永久的に使用できるのは、あくまで破損が見られない場合です。
同じセラミックはどれくらい使い続けられる?
セラミックは、一度装着してから10~15年ほど使用できるのが一般的です。
こちらは保険診療の銀歯や樹脂素材と比べて非常に長いです。
また状態を良好に保てば、15年以上使用することもできます。
場合によっては20~30年使用できることもあり、セラミックを装着した年齢によっては、実質永久に使用できることもあるでしょう。
ただし、状態が良ければ寿命が長くなるということは、言い換えると状態が悪ければ寿命が縮むということでもあります。
きちんとセルフケアがされていなかったり、歯科クリニックのメンテナンスに通わなかったりすると、10年以下でダメになってしまうことも十分考えられます。
セラミックを破損したまま使い続けるとどうなる?
同じセラミックをそのまま使用したいからといって、破損した状態を放置したままにすると、さまざまなリスクが生じます。
まず割れた部分が頬や舌、唇などの粘膜を傷つけることにより、痛みや炎症、細菌感染などのリスクが高まります。
またセラミックが割れて噛み合わせが変わることで、他の歯に過度な負担がかかり、歯並びや噛み合わせがさらに悪化することもあります。
さらに、セラミックが割れて土台部分が露出すれば虫歯を発症しやすくなりますし、神経が残っている歯の場合は二次虫歯を発症したとき針で刺したような痛みに襲われます。
ちなみに神経がない歯の場合、セラミックが割れて二次虫歯を発症しても気付かない可能性があり、そのまま症状が悪化すると抜歯の可能性が高まります。
セラミックを交換する際の目安は?
セラミックを交換する際の目安は、先ほど触れた破損があったときのほか、二次虫歯を発症したときや天然歯との適合が悪くなったときです。
セラミックは歯質との適合性が高いため、銀歯やレジンなどに比べて虫歯が再発しにくいです。
しかし、セラミックの状態によっては二次虫歯を発症することもあります。
歯の中に生じた虫歯については、補綴物を装着したまま治療できないため、このときはセラミックを交換せざるを得ません。
またセラミックは当初天然歯とピッタリ適合していますが、歯並びや噛み合わせが変化したり、歯周病によって歯茎や顎の骨が下がったりするとズレが生じます。
セラミックと歯質が適合していない状態は非常に危険なため、新しいものに交換しなければいけない場合も多々あります。
特に注意したいセラミックの寿命を縮める習慣
セラミックをできるだけ長く使用したい方は、歯ぎしりや食いしばりに注意しましょう。
こちらの習慣は、セラミックの寿命を縮める大きな原因になります。
セラミックは、陶器というお茶碗などで使用される材料でできています。
陶器は強度に優れていますが、瞬間的な強い衝撃が加わると割れやすいという特徴があります。
また歯ぎしりや食いしばりは、強い力が継続して歯にかかるものであり、セラミックはこの習慣に耐えられない可能性があります。
特に夜間の歯ぎしりや食いしばりは無意識であり、普段の咬合時よりも圧倒的に強い負荷がかかります。
最悪の場合、朝起きたらセラミックが割れていたということにもなりかねません。
寿命を迎える前に交換することは可能?
セラミックが寿命を迎える前に交換することは、決して不可能ではありません。
例えば、一度ハイブリッドセラミックを装着したものの、やはりジルコニアセラミックに交換したいといったケースです。
しかし、まだ十分使えるにもかかわらず、別のセラミック素材に変更するというのはとてももったいないことです。
そのため、できれば早めに交換せずに済むように、最初から長く使える素材を選ぶことをおすすめします。
まとめ
一度装着したセラミックをずっと使い続けることは、理論上可能です。
しかし、破損などのリスクがある以上、“使い続けられる”と断言することはできません。
また破損したセラミックを使い続けることはできませんし、生活習慣などによっては早めに破損してしまうこともあります。
つまり交換せずに使い続けるには、患者さんの努力が必要だということです。