セラミック矯正で使用される素材は、いずれもセラミックを含んでいますが、特徴は大きく異なります。
そのため、素材によって仕上がりや矯正後の使い心地なども変わってきます。
今回は、セラミック矯正で使用するメタルセラミックの概要、メリット・デメリットについて解説します。
メタルセラミックの概要
メタルセラミックは、金蔵の裏打ちの上にセラミックを盛り付けた被せ物で、メタルボンドとも呼ばれます。
セラミックだけでは不足しがちな強度を、内側の金属が補っているのが特徴です。
アメリカで研究・開発されたもので、セラミックの素材の中では長い歴史を誇ります。
近年は、オールセラミックなど他のセラミック素材が主流になりつつありますが、今でも多くの歯科クリニックが取り扱っています。
メタルセラミックのメリット
セラミック矯正で使用するメタルセラミックのメリットは、主に以下の通りです。
・強度が高い
・自然な色合い
・症例が豊富
・設計の柔軟性が高い
各メリットについて詳しく説明します。
強度が高い
メタルセラミックは部分的に金属を使用しているため、強度が非常に高いです。
そのため、力が加わりやすい奥歯にも使用できます。
オールセラミックなども耐久性が低いわけではありませんが、セラミックは陶器の素材であるため、強い衝撃が加わると割れるリスクがあります。
自然な色合い
メタルセラミックの表面にはセラミックが使用されているため、自然な色合いを実現できます。
セラミックの見た目は、天然歯と見分けがつかないほどキレイな白色です。
前歯の被せ物であっても気づかれる可能性は低く、何も気にせず食事をしたり、歯を出して笑ったりすることができます。
また、セラミックの表面は、舌が触れると気持ち良いほどツルツルしています。
そのため、食べ物や飲み物によるプラークが付着しにくく、年数経過による変色もほとんど見られません。
症例が豊富
メタルセラミックは、金属を使用したセラミックという特殊な位置づけですが、日本国内では数十年以上の歴史があります。
そのため、オールセラミックやジルコニアセラミックなどと比べて、症例やエビデンス(根拠)が豊富です。
また、症例が多いということは、万が一のトラブルやアフターケアにも対応してもらいやすいということになります。
設計の柔軟性が高い
メタルセラミックには、設計の柔軟性が高いというメリットもあります。
メタルセラミックの基本形はありますが、どこまで金属で覆うか、被せ物を安定させるための構造を付けるかどうかなどは設計できます。
これらの設計は、オールセラミックでは行えません。
また、それぞれのケースに応じて設計を変えることで、前歯でも奥歯でも使用できます。
メタルセラミックのデメリット
一方で、メタルセラミックには以下のようなデメリットもあります。
・オールセラミックよりも審美性が劣る
・金属アレルギーのリスクがある
・歯茎が黒くなる可能性がある
各デメリットについて詳しく説明します。
オールセラミックよりも審美性が劣る
メタルセラミックは自然な色合いを実現できますが、オールセラミックと比べると多少審美性は劣ります。
メタルセラミックは内側に金属を使用しているため、特に透明度や色調といった部分は薄れます。
また、劣化によって表面のセラミック部分が剥がれてしまうと、金属部分が露出してより審美性は失われます。
さらに、メタルセラミックは裏側の金属が一部露出しています。
そのため、劣化していなくても、角度によっては金属部分が見えてしまう可能性があります。
金属アレルギーのリスクがある
メタルセラミックの大きなデメリットが、金属アレルギーのリスクです。
金属は長く口内に留まることにより、金属イオンが溶け出し、金属アレルギーを引き起こすことがあります。
金属アレルギーを発症すると、湿疹や頭痛、めまいや肩こりなどさまざまな症状につながります。
メタルセラミックは、見た目はセラミックでも内側にはニッケルクロムや銀などの金属があるため、アレルギーの原因になり得ます。
歯茎が黒くなる可能性がある
メタルセラミックを使用することにより、歯茎が黒くなる可能性もあります。
先ほど、金属は口内に留まると金属アレルギーにつながるという話をしましたが、場合によってはメタルタトゥーを引き起こします。
メタルタトゥーは、金属が溶け出して歯茎が黒ずむもので、メタルセラミックにはこちらのリスクもあります。
また、一度黒ずんでしまった歯茎は、元のキレイな色に戻すのが難しいです。
そのため、健康な歯茎にもかかわらず、あまり良くない印象を与えてしまいます。
まとめ
メタルセラミックは、金属を使用することによって高い強度を実現しています。
また、症例や実績が多く、信頼性の高い素材だと言えます。
一方で、金属アレルギーやメタルタトゥーなどのリスクがあるため、中には適用できない方もいます。
そのため、実際使用するかどうかは、歯科クリニックの医師のアドバイスを参考に決定しましょう。