歯科クリニックで提供されるセラミック素材は多種多様であり、それぞれが独自の特徴を持っています。
中でも人気が高いセラミック素材にジルコニアが挙げられ、こちらは強度の高さがセールスポイントです。
では、ジルコニアクラウンが割れることはあるのでしょうか?
今回はこちらの点を中心に解説します。
ジルコニアの概要
ジルコニアは正式には酸化ジルコニウムと呼ばれるもので、セラミック治療をはじめとする歯科治療において、金属に代わる歯科材料として注目されています。
金属を一切使用しないため、金属アレルギーになる心配がなく、なおかつ変色や腐食もほとんど起こりません。
そのため、長期にわたって審美性が持続します。
またジルコニアの一番の特徴は、なんといっても強度が高く割れにくいという点です。
すべてがセラミックでできている素材よりも強度が高く、人工ダイアモンドと呼ばれることもあります。
ジルコニアが割れる原因
結論からいうと、強度の高いジルコニアでも割れてしまう可能性はあります。
本物のダイアモンドですら、絶対に割れないというわけではないため、ジルコニアでも100%破損や破折を回避するのは難しいです。
またジルコニアが割れてしまう主な原因としては、以下のことが挙げられます。
・歯ぎしり、食いしばり
・接着不良
・硬いものを噛む
・厚さの不足
・事故や転倒
各項目について詳しく説明します。
歯ぎしり、食いしばり
慢性的な歯ぎしりや食いしばりがある方は、ジルコニアクラウンが破損するリスクが高まります。
特に就寝時の歯ぎしりや食いしばりは、体重の何倍もの力を歯にかける行動です。
そのため、さすがのジルコニアでも、慢性的にそのような行動が続くとダメージが蓄積します。
また歯ぎしりや食いしばりでダメージを受けたジルコニアは、通常破損には至らないような軽い衝撃であっても割れてしまう可能性があります。
接着不良
ジルコニアクラウンの接着が不適切であった場合も、割れてしまうリスクが高まります。
こちらはジルコニアクラウンの下に隙間ができるからです。
どれほど硬い素材であっても、下に空間があれば、垂直的に力がかかったときに割れやすくなります。
例えるなら、空手の瓦割りと同じ原理です。
歯科クリニックでは、精度の高いセラミック治療が提供されますが、稀に技術不足によってこのような接着不良が起こることがあります。
硬いものを噛む
硬いものを噛んだ拍子に、ジルコニアクラウンが割れてしまうというケースもあります。
ジルコニアクラウンは咬合力に優れているため、多少硬さのあるものでも問題なく咀嚼できます。
しかし硬いバゲットやナッツ、煎餅などを頻繁に食べていると、衝撃が加わって割れやすくなってしまいます。
厚さの不足
厚さが足りないことでも、ジルコニアクラウンは割れてしまうことがあります。
このような厚さ不足は、特に奥歯のセラミック治療で起こりやすいです。
奥歯に近づくにつれて、人の歯は擦り減っていき、噛み合う歯との距離が短くなります。
このことから奥歯は特に厚みを持たせなければいけませんが、歯を削れる量には限界があります。
そのため十分に厚みを持たせたはずが、実際はそれほど厚さを取れず、咬合時にジルコニアクラウンが割れやすくなってしまうということが起こり得ます。
事故や転倒
単純に事故に遭った場合や、転倒して歯を打ちつけた場合などは、ジルコニアクラウンが割れるリスクが高まります。
このような場合にジルコニアクラウンにかかる力は、歯ぎしりや食いしばりに匹敵することがあります。
そのため、どうしても破損や破折は避けられません。
ジルコニアは噛み合うセラミックが割れる原因にもなる
ジルコニアクラウンを装着する場合、噛み合う歯にセラミックがあると、そちらが割れてしまう可能性があります。
なぜなら、一般的なセラミックよりも、ジルコニアの方が強度は高いからです。
つまりジルコニアとセラミックが咬合時にぶつかることで、強度の低いセラミックが負けてしまうということです。
ジルコニアクラウンが割れた場合の対処法
ジルコニアクラウンに破損や破折が見られた場合は、すぐに歯科クリニックを受診しましょう。
すぐに通えない場合は、まず応急処置として市販の痛み止めを服用します。
また割れたジルコニアの破片で口内を傷つけないよう、ガーゼなどで保護することも大切です。
さらに、割れた部分に食べカスや細菌が入らないよう、できる限り清潔に保ちます。
ちなみにジルコニアの割れ方が小さい場合は、歯科用の接着剤でそのまま修復できる可能性もあります。
まとめ
人工ダイアモンドと呼ばれるほど強度に定評があるジルコニアですが、絶対に割れないというわけではありません。
強い衝撃や治療時の不具合があった場合は、割れるリスクが高まります。
もちろん、割れるリスクはジルコニア以外のセラミック素材にも存在するため、なるべく予防できるように対策を取っておくことが大切です。
再治療が必要になると、費用だけでなく身体の負担も大きくなります。