虫歯の治療をした際に装着するクラウンやインレーには、さまざまな素材でできたものがあります。
一般的には銀歯が用いられますが、見た目が気になるという人に人気なのがセラミック、そしてセラミックの一種であるジルコニアです。
どちらもセラミックの一種ですが、何が違うのか解説します。
ジルコニアの特徴は?
ジルコニアはセラミックの一種であり、特に強度が高く、人工ダイヤモンドとも呼ばれています。
そのため、長時間使用する場合でも耐えられるという特徴があるのです。
また、ジルコニアは生体親和性に優れた素材であり、人工関節にも使用されます。
金属アレルギーの方でも安心して使用できる素材です。
ジルコニアの硬さはダイヤモンドに近く、モース硬度という硬さの単位ではダイヤモンドが最高の10であるのに対して、ジルコニアは8から8.5です。
比較対象として、歯の表面のエナメル質のモース硬度は7、鉄は4であるため、ジルコニアがどれほど硬いのかイメージできるのではないでしょうか。
また、ジルコニアには摩耗しにくいという特徴もあり、装着してから長時間が経過してもほとんど擦り減らないことが利点です。
ただし、ジルコニアは審美性に劣るため、天然歯のような色調や質感などを再現することはできません。
透明感が少なく、天然歯と比べると白すぎるため、他の歯と比較したときに目立つこともあるのです。
耐久性や強度に優れているため、ジルコニアは噛むときに強い力がかかる奥歯の治療に向いています。
奥歯は外から見えにくいため、見た目よりも機能性の方が重視されます。
そのため、ジルコニアのように丈夫な素材でできたクラウンが適しているのです。
また、ジルコニアは、複数の歯のクラウンをつなげた形状となっているブリッジにも向いています。
セラミックの特徴は?
セラミックは、食器などに用いられる陶器を素材として作られているクラウンなどのことです。
全てセラミックでできている場合はオールセラミックといいます。
セラミックの特徴は、自然な見た目で美しく、オールセラミックなら金属アレルギーの心配がないという点です。
セラミックは、天然歯に近い色調や質感を再現できるため、装着しているときに隣の天然歯と比べても違和感が少ないのです。
セラミックは、ジルコニアにはない透明感もあるため、より天然歯に近い見た目を再現できます。
硬度が天然歯と同等であることから、口内でもなじみやすく、噛み合わせの歯とぶつかってもダメージを与えにくいという特徴もあります。
セラミックは精密に作製されるため、装着していても周囲の歯とほとんど見分けがつきません。
そのため、見た目を重視する人に向いています。
ただし、強度は金属と比べた場合に低く、特に衝撃には弱いため、強い衝撃を受けると欠けてしまったり、割れたりすることもあります。
外から加わる力だけではなく、食いしばりや歯ぎしりの癖がある方や、強く噛む癖がある方も、割れるリスクが高いでしょう。
特に奥歯は強い力がかかるため、割れるリスクが高いという人は奥歯にセラミックを使用するのを避けることをおすすめします。
ただし、近年では耐久性が高いセラミックも開発されていて、奥歯に使用できるケースも増えています。
セラミックが持つ最大のメリットは審美性の高さであり、色調をかなり細かく調整できるため、前歯には特に向いているでしょう。
ジルコニアとセラミックの比較
ジルコニアもセラミックの一種ですが、強度や審美性、費用などにかなりの違いがあるため、それぞれを比較してみましょう。
見た目の違いとして、ジルコニアは白い歯にはなるものの天然歯とは若干違う見た目になるのに対し、セラミックは天然歯そっくりの見た目になります。
特に素材の持つ透明感が異なり、ジルコニアは透明感があまりないのに対して、セラミックは透明感や色調の調整がしやすいです。
ジルコニアは、人によっては見た目に違和感を覚えることもあるため、審美性を重視するのであればセラミックを選んだ方がよいでしょう。
強度に関しては圧倒的にジルコニアに軍配が上がり、天然歯と同等の強度しかないセラミックに対し、ジルコニアは金属や宝石に匹敵する硬さがあります。
また、セラミックは衝撃に弱い素材です。
したがって、強い衝撃が加わると強度以上にもろくなることもあります。
特に、歯ぎしりや食いしばりに弱いため、大きな負担がかかる奥歯にはセラミックを使用するのは難しいのですが、ジルコニアであれば問題ないでしょう。
費用を比較した場合、どちらも自由診療になることから、基本的に高額です。
それでも、ジルコニアの方が若干安くなっています。
歯科医院によって具体的な金額に違いがあるため、治療を受ける前に見積りを依頼し、複数の歯科医院を比較しましょう。
また、どちらも耐久性に優れているため、一度治療を受ければ10年以上使用できることが多いでしょう。
ただし、長く使うには正しいケアが必要となることに注意が必要です。
まとめ
ジルコニアとセラミックはどちらもセラミックの一種ですが、クラウンなどの素材にした場合はさまざまな違いがあります。
ジルコニアは人工ダイヤモンドとも呼ばれるほどの硬度が特徴で、奥歯にも使用できますが、透明感に乏しいため審美性には劣るでしょう。
セラミックは審美性が高く、天然歯の見た目をかなり再現できるため、前歯の治療などに向いていますが、強度の面ではやや劣ります。